役員報酬と手取り額とは
法人を設立して一人社長になると、自分への給与は「役員報酬」として会社から支払う形になります。しかし、毎月の役員報酬がそのまま手元に入るわけではありません。
役員報酬からは以下の3つが天引きされ、残った金額が銀行に振り込まれます。
- 社会保険料(健康保険 + 厚生年金の本人負担分)
- 源泉所得税
- 住民税(特別徴収)
「役員報酬を30万円に設定したのに、振込額が23万円だった」というのはよくある話で、初めて法人を設立した方が驚くポイントのひとつです。この記事では、それぞれの控除項目の仕組みと、手取り額の計算方法を順番に解説します。
控除項目①:社会保険料(本人負担分)
社会保険の仕組み
法人を設立すると、役員(社長自身も含む)は社会保険(健康保険・厚生年金)に強制加入となります。個人事業主のときに加入していた国民健康保険・国民年金とは別の制度です。
社会保険料は会社と本人が折半して負担します。つまり、同じ金額を会社も負担しています。
保険料率(2026年度・協会けんぽ・東京都の場合)
| 種類 | 本人負担率 | 会社負担率 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料 | 4.985% | 4.985% | 9.97% |
| 厚生年金保険料 | 9.15% | 9.15% | 18.3% |
| 合計 | 14.135% | 14.135% | 28.27% |
※ 健康保険料は都道府県・加入組合によって異なります。40歳以上は介護保険料も加算されます。
計算例
役員報酬 300,000円 の場合:
- 健康保険料(本人):300,000円 × 4.985% ≒ 14,955円
- 厚生年金保険料(本人):300,000円 × 9.15% = 27,450円
- 社会保険料合計:42,405円
※ 実際の保険料は「標準報酬月額」という区分に基づいて計算されるため、端数の出方が異なることがあります。
控除項目②:源泉所得税
給与所得の源泉徴収
役員報酬は「給与所得」として扱われるため、毎月の支払い時に所得税が源泉徴収されます。フリーランスへの報酬と異なり、**「給与所得の源泉徴収税額表」**を使って計算します。
税額は「役員報酬 − 社会保険料(本人負担分)」の金額と扶養家族の人数をもとに国税庁の税額表で決まります。
計算例
役員報酬 300,000円、社会保険料控除後の金額 257,595円、扶養なしの場合:
- 国税庁の税額表(月額表・甲欄)で確認
- 源泉所得税:約 5,460円(2026年度)
※ 税額は年度・扶養人数によって変わります。正確な金額は国税庁の源泉徴収税額表でご確認ください。
控除項目③:住民税(特別徴収)
住民税とは
住民税は、前年の所得をもとに計算された税金で、6月〜翌5月の12回に分けて毎月給与から天引きされます(特別徴収)。
注意点は、住民税は前年の所得に基づくという点です。
- 法人設立1年目(前年が無収入や個人事業主の場合):住民税が少ない or ゼロのこともある
- 法人設立2年目以降:前年の役員報酬に基づいて住民税が課される
金額の確認方法
毎年5月〜6月頃に自治体から「特別徴収税額通知書」が届きます。そこに6月から翌5月までの各月の住民税額が記載されているので、その金額を毎月天引きします。
計算例
前年の役員報酬が 300万円(年間)だった場合の住民税の目安:
- 所得控除などによって変わりますが、おおよそ 月額10,000〜15,000円 程度
手取り額の計算(まとめ)
役員報酬300,000円、扶養なし、住民税10,000円の場合:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬 | 300,000円 |
| − 健康保険料(本人) | − 14,955円 |
| − 厚生年金保険料(本人) | − 27,450円 |
| − 源泉所得税 | − 5,460円 |
| − 住民税 | − 10,000円 |
| 手取り額(振込額) | 242,135円 |
30万円の役員報酬に対して、手取りは約24.2万円。控除合計は約57,865円(約19%)になります。
役員報酬の設定で注意すること
年に1度しか変更できない
役員報酬は事業年度開始から3ヶ月以内に決定し、原則として年度内は変更できません(定期同額給与の要件)。途中で変更すると、法人税の計算上、役員報酬として認められなくなる可能性があります。
設定の際は、手取り額を試算した上で無理のない金額を決めることが重要です。
社会保険料は会社も負担する
役員報酬から天引きされる社会保険料は本人負担分だけですが、会社(法人)も同額を負担しています。役員報酬300,000円の場合、会社側の社会保険料負担も約42,000円発生します。
つまり、会社から見ると「役員報酬300,000円 + 会社負担の社会保険料42,000円 = 合計342,000円」が実質的なコストになります。役員報酬の金額を決める際は、この点も考慮に入れましょう。
よくある疑問
Q. 役員報酬ゼロにしても大丈夫?
法的には問題ありません。ただし、役員報酬がゼロの場合は社会保険料も発生しません(厚生年金を将来受け取れなくなる)。また、所得がゼロになるため住宅ローンや各種ローンの審査に影響する場合があります。
Q. 毎月の計算は自分でやる必要がある?
税理士や社労士に顧問を依頼している場合は計算・納付の管理をお任せできます。自分で行う場合は計算ツールを活用するのが便利です。
まとめ
役員報酬から天引きされる主な項目は以下の3つです。
- 社会保険料(健康保険 + 厚生年金の本人負担:約14%)
- 源泉所得税(税額表に基づく)
- 住民税(前年所得をもとに年1回通知)
これらを合計すると、役員報酬の15〜25%程度が控除されるのが一般的です。
毎月の手取り額・振込額の計算は、さくシスのフリーランス計算ツールで簡単に確認できます。役員報酬の金額を入力するだけで、各控除額と手取り額を自動で計算できます。